対談 阿佐ヶ谷3349柴田修平とお客様
第1回 鈴木孝輔さん
第1回のゲストは『阿佐ヶ谷3349』の様々なディレクションにも携わってもらっている友人の鈴木孝輔氏。集客とは全く別の、僕は僕の為に、孝輔は孝輔自身の為に、ひたすらしゃべってみました。 普段僕らが話してる内容をそのまま対談という形で載っけたら面白いなと思ったのが『立入禁止』のきっかけです。ひたすら二人でしゃべるだけでも、いいかなと思いもしましたが、何よりホームページに載せるモノなので、毎回ゲストを呼ぼうと決めました。『立入禁止』というタイトルにしたのは、こちらから見せるモノじゃなく、のぞきたい人だけ自己責任でのぞけばいい。そんな想いからつけました。記念すべき第1回は二人で今後の方向性を語ってます。 何者でもない僕たちですが、色々考えてます。 のぞきたい人だけどうぞ勝手に覗いてください。

阿佐ヶ谷3349代表
柴田修平
[左] 鈴木孝輔(スズキコウスケ) 1986.7
柴田曰く、文学的ハイパーメディアクリエイター
映画制作、CM制作、執筆活動、ライティング業、俳優業など、体育会系以外の文化的な殆どをマルチにこなすインテリジゴロ。
また、『阿佐ヶ谷3349』の様々なディレクションにも携わり、多忙な毎日を送る。一定量の酒量を越えるとズボンを脱ぎだすが、前科は無し。笑顔がかわいいプリンシパルな原理主義者。29歳。
[右] 柴田修平(シバタシュウヘイ) 1986.6
原宿の某サロンにて下積み~スタイリストデビュー~トップスタイリストを経験。23歳の時、異例の店長に抜擢。その後、複数の店舗の運営管理を任され、赤字店舗を復活させる偉業を成し遂げる。2015年8月、『阿佐ヶ谷3349』代表に就任。カッコつけないカッコよさを現在模索中。知らないことを知らないと言える素直さを目標にし、『立入禁止(仮)』に参加。字が汚いがそんな自分は嫌いじゃない。真面目な優良社会不適合者。29歳。
■ 29歳の子供たち
鈴木:まず「この連載で何をしようとしているのか?」ということに尽きる。
柴田:始まっちゃいましたねえ(笑)色々な人の話を聞きたいというのがあって。もうすぐ30歳じゃん? 節目じゃないけどさ。
鈴:(笑)
柴:かっこいい大人になりたいし、色々な話を聞きたいし。で、縁あって孝輔に協力してもらって、毎回ゲストを呼んでお話を聞くっていう。最後は3人で写真を真顔で撮って、載っけていけたらいいなと思う。一応、呼ぶ人の条件じゃないけど、なにかに特化している人。社会的な地位とかじゃなく。上下はどうでもよくて。
鈴:少なくともこちらが呼ぶときに「この人はかっこいいな」っていう。
柴:偉そうだけど、それはあるね。毎回僕が提案してもいいし、孝輔が提案してもいいし。で、最終的には本にします(笑)
鈴:多彩なゲストをお呼びしてやっていくという。
柴:そうそう、そうなんですよ。あと「この人には勝てないな」って人。
鈴:いいねいいね(笑)一応参考書として※1村上龍と坂本龍一の対談集を持参しまして……、80年代の空気が出ている本ですけど。
柴:85年くらい?
鈴:そうだね。今読んでも内容的には古くない。雑談というか、本人たちが聞きたいことを聞くというスタイルなんですが、結局「僕たちは何を聞きたいんだ?」ってことですよね。
柴:そうだね。例えばさ、美容室でタブーな話ってのがあってさ、基本的にスポーツ、宗教、特定の政治団体。やっぱり前面に「これ好きなんすよ」ってやっちゃうと、お客さんも不快になっちゃう。
鈴:そうだね。普通の職場でもなかなかしちゃいけない話だよね。こういう場所だったら余計そうだね。
柴:俺だって嫌だもん。「安定は希望です」とか「戦争法案反対」とか貼ってる美容室。
鈴:思想強い(笑)
柴:例えば、すんごい爽やかな香水と、エロい香水があって。人によって好みがあるじゃないですか。だから僕らはあまり香水つけちゃいけないって暗黙のルールがある。でも、この場はバリバリ香水出していい。
鈴:じゃあさ、手始めに、柴田さんという人物を深く掘り下げて……。
柴:そういう感じだとかしこまっちゃうよね(笑)
鈴:いつもみたいに話す感じと、何かを聞き出すって、また違うから難しい。
柴:そうだね。
■ 「幸せ」と「かっこよさ」
鈴:個人的に気になるところなんですが、なぜ、人は「かっこいい」にこだわるのか。なんでかっこいいのが好きなんですかね。
柴:なんでだろうね。僕の場合、もともと労働っていう概念があんまりなくて。ないんじゃないな、労働が嫌いで。僕は。
鈴:ふむふむ。
柴:ないんじゃなくて、嫌いなんですよ。あ!あのう、僕が自分の事かっこいいみたいに言いたいわけじゃないからね(笑)
鈴:はいはい(笑)
柴:何かを我慢してやるってことが、やっぱ。30歳を前にしてあえて本音を言うと、嫌いで。嫌いだっていう自分に気づいて。楽しくないとなぁって。で、自分が楽しいと思うことが、このお店にあるものだったり、一緒にやる仲間だったり。で、そこに共鳴してくれるお客さんがいるって感じだから。
鈴:いや、正にそうね。
柴:答えになってるのかわかんないけど。かっこいいことをしていたいな、って。「働こう」「我慢しなきゃ」っていうよりは、かっこよく生きたいなっていう部分が強いから、かっこいいもの買おうって思う。じゃあ、かっこいいものはなにかってなったときに、実はこういうの好きなんだよって言ったら孝輔が「そうだったんですか」ってなって。「僕もなんすよ」って。そこから共鳴して、発展して※2ナナコンになったりとか、そういうのがあるから。
鈴:まさにこの本の中で言ってることなんすけど、サルを研究している学者さんがいて、宗教家の人たちに意地悪な質問をしたんだって。たとえば「地獄ってどんな感じなんですか」って聞くと「針の山がある」とか「炎の中で焼かれる」という話はよくされると。
柴:うんうん。
鈴:逆に「天国ってのはどんな感じなんですか」って聞くと、意外とね、みんなフワッとしているらしい。
柴:ふむふむ。
鈴:なにか音楽は鳴っているらしい、きれいな。あと美女がいっぱいいるとか(笑)
柴:うんうん。
鈴:意外とね、辛いとか、嫌なことっていうのは人間大体一緒なんだけど、幸せってなると、みんなフワッとしているというのがあるんですよね。かっこいいと幸せな状態って、わりと近い状態だと。だからそれで言うと……。
柴:ぽい。それっぽい。対談っぽいわー(笑)
鈴:(笑)それで言うと、かっこいいも色々ある。だから、普段かっこよくない人が、例えば父親が料理をしている姿がかっこいいみたいに、ギャップみたいなかっこよさがあったり。女性だったら、佇まいが凛としていて美しい、とか。そりゃかっこいいよね、っていう。色々あると思うんすよ。だから「なんかよく分かんないけどかっこいいな」っていうゲストを呼ぶ、でいい。話していく中で、そういうのをこう、聞けていけたら。
柴:これから呼びたい人達に共通しているのは、これもすごくフワッとした言い方だけど、自由な人が多いかなって思いますね。あの、物事から逃げてるっていうんじゃなくて、自分で勝ち取ってる自由さっていうものが。たぶん、若いとき苦労したんだなっていうのが、勝手なイメージだけど結構あったりして。そういう人たちが経験してきたこと、なぜ今そうなっているのかっていう。
鈴:聞きたい。
柴:あと「これからそうなるんだろうな」って思う若い人たち……。いろんな人のバックグラウンドを聞けたらいいな、と。
鈴:うんうん。
柴:やっぱ鏡越しだと聞けない部分もあって。
鈴:お客さんと接しているときって確かに鏡越しだもんね、美容師。なんか文学ですよ、その表現。
柴:去年の春からこれ言おうと思ってた。
鈴:(笑)
鈴:鏡越しじゃなくて、直接ね。良いですよ。
柴:どうしても美容室になるとね、そういうところがあるから。
鈴:お客さんからしても盲点ですね。
■ 特別な場所
柴:この連載に出たら、最悪もう来なくなっちゃうんじゃないかな、っていうくらいで丁度いいのかも。その人が。
鈴:えー!いいの?
柴:うーん、ちょっと難しいかな……。要するに、ここではあんまり僕も「おもてなしをしたい」って感じじゃなくて。何でも聞くというスタンスでいきたいなって。話していく中で「僕は違うと思うんですよね」って、逆に攻撃されたいし。そういう特別な場所になればいいなと。
鈴:なるほどねぇ。攻めるなあ(笑)
柴:残るものだしね、ネット上に。例えばそれを削除しても、ちょっと残骸が残っちゃったりするじゃないですか。ネットって。だから、ほんとに一言一言、フワっていうよりは、しっかりと話をしたいっていう……、あ、新しいゲストが来ました、今録音中なんで。
伊藤:わぁ、すみません(笑)
柴:全然全然。
鈴:※3伊藤さんがいらっしゃいました。
伊:よろしくお願いします。試しに?
柴:試しにというか、本番。
鈴:第1回ですね。
柴:本番中です。
伊:ウソ(笑)
鈴:かっこいいとはどういうことなんでしょうか。
伊:何の議題?(笑)
鈴:かっこいいってなんなんでしょうね。
柴:どういうローテーションでやっていこうかってことすらも、まだ決まってないからね。
鈴:そですね。まったく決まってないもんね。
柴:そのへんも決めないと。
鈴:伊藤さんはあれっすか、こう……。
伊:なんじゃ?
鈴:こういうところに呼ぶとしたら、どういう人がいいですか。ゲストで。どういう人をゲストで呼びたいですか。
伊:うーん、しゃべるのが好きな人ですね。一投げたら十に広げてくれる人。聞いてて飽きない人。
鈴:しゃべるのがね、あんまり好きじゃない人もいますからね。美容師としてやってるときに、あ、これはまた個人的に聞きたいことでもあるんだけど、しゃべらないお客さんとかもいると思うんだけど、こっちで話を引き出してあげなきゃ、っていうのはあったりするんですか?
伊:うーん、そうでもないかも。ぼーってしたいお客さんもいるし。
鈴:はいはい。
柴:バリアを貼る人もいるんだよね。そこはあんまりバリアを外さないようにしようと。
鈴:美容師ってさ、接客業の中でも、一対一でいる時間ってかなり長いでしょ。
伊:うん。
鈴:例えば飲食業ってメニュー来て、注文して、料理来て、って、そんな時間かからないじゃん。でも美容師って、ずっと付きっきりだもんね。
柴:席の関係上、半個室みたいな感じだから。その辺はちょっと強いかなって思いますね。
鈴:それこそね、ここがなんでも言っていい場所だとすると、風俗に近いよね。
柴:いや、ほんとそうだと思うよ。うん。
鈴:「床屋」の語源がそこにあるって聞いたことあるけど。
柴:ね。「床」ってね。
伊:あぁ、そうなんだ。
鈴:そのあたりの歴史がわかる本とかさ、あったら読みたいんだけど。修平さん知らないの?
柴:知らん。
鈴:そういうところからね、紐解きたいですよね。
柴:独特な場所ではありますよね。皮膚に触れるしね。
鈴:そうそう。
柴:シャンプーはセックスだって昔先輩に言われたもん。
鈴:お医者さんというか、精神科医みたいところもあるのかなと思ったり。特殊な職業だなと思うんですよ。そういうのもね、個人的に聞いていきたいんですよね。
柴:なんでもどうぞ。(伊藤退席)
■ きっかけ、鈴木の正体、イッちゃった。
鈴:あと、なぜ美容師だったかっていうのは聞いてみたいすけどね。
柴:あ、僕が?
鈴:はい。
柴:全然不順な動機ですよ。中学の時ね、その、なんていうのか……、「先生」っていう存在があって。
鈴:ありますあります。
柴:形式上、「先」を「生」きる人がいて。「こうしろ」「こうしなさい」って言われて。それに従ってなにかをするっていうことが、とにかく嫌で。自分で何かを・・・やっぱこう、自分で動きたい。生み出したい。自由でいたい、って部分が強くて。 鈴;うん。
柴:父親がね、割と厳しいというか、「誰のおかげで飯食えてんだ」っていう感じの親父だったから、早く手に職付けてっていう。もうそれで何でも良かった。とにかくサラリーマンみたいなのが嫌だった。自分でやりたかった。あと、女にモテそうかなって(笑)
鈴:大事ですね。
柴:で、その中で、美容師を目指す決め手は、強いて言うとなんでもリンクできるっていう。
鈴:何でも?
柴:うん。映画だったり、漫画だったり。何でもリンクしてるっていうのが魅力的かなぁって思ってたんだけど、入ってみたら全然そんなことないっていう。
鈴:(笑)
柴:はい。
鈴:なかなか今このお店でやってるようなことはできないもんね。
柴:そうそうそう。
鈴:逆に、なんでないんですかね。
柴:他があるおかげで、ここがこういう感じで際立てているって部分はあるんだけども。うーん。全体のシステムですかね。
鈴:ふーん。
柴:言っちゃえば、「美容室はこうあるべき」っていう価値観みたいなものがあるのかなと。
鈴:うん。
柴:J-POPみたいな。
鈴:はいはいはい。
柴:例えば「これ聞けばオリコンで1位だからイケてるんだ」とか「雑誌に載ってるからここに行けばいいんだ」っていうものが、やっぱりまだまだ蔓延してるのかなっていうのはありますね。けども、いまそれは、かなり無くなってきてると思いますけどね。選ぶのは美容室側じゃなくお客さんだからね。
鈴:うん。わかる気はする。
柴:媒体はネットの時代だし、情報だらけだし、これからうちも頑張っていかないとっていう部分はありますよ。ウソだったりハリボテだったりは、通用しない時代かなと。
鈴:すぐバレるから。
柴:だからこそ、こういうところで、少しは教養を身につけたい。既にあるものをより良くできるように、色々な人の話を聞きたいなっていう。
鈴:うんうん。
柴:逆に孝輔はなぜ映像業界なの?
鈴:僕ですか。
柴:まず君は、君が誰やねんっていうとこから。
鈴:そうだね。
柴:そうそうそう。
鈴:まぁ、ここのお客さんなわけですけど。 鈴、
柴:(笑)
鈴:最近はお客さんなのか、ただ遊びに来てるのか、よくわからない。
柴:その境界が曖昧になった部分はありますね。
鈴:まず、修平と話すときによく出てくるんですが、※4紀里谷和明の存在は大きかったわけですよ。
柴:うんうんうん(笑)
鈴:それはやっぱり、あのー……。
柴:恥ずかしいけどね!(笑)
鈴:良くも悪くもね、ヒーローだったわけですよ。やっぱり。
柴:ね!めっちゃ好き!
鈴:※5『CASSHERN』見たときに、邦画になにか、新しい可能性があるのかもしれないって(笑)。
柴:思ったよね。
鈴:心意気に打たれてしまうところがありまして……。
柴:うんうんうん。
鈴:作ってるものはね、ちゃっちいんですよ。安っぽい。でも、情動みたいなものは伝わってくるわけ。
柴:うん。
鈴:それに当てられてしまい……。
柴:うんうんうん。
鈴:あと、※6SUTUDIO4℃が作った※7『鉄コン筋クリート』ですよね。あれを見たときに、セックスじゃないけど、軽くイッてしまったんですね。
柴:あぁ。
鈴:エクスタシーみたいなものを初めて映画で・・・
柴:あ、いまちょっと対談の録音中です。※8ユウコさんが来ました。
鈴:ゲストのユウコさんです。
ユウコ:………。
柴:あ、いいっすよ。お大事に。ちょっと体調不良。
鈴:風邪?
ユ:原因不明。
鈴:お大事にしてください。
柴:第13回のときに呼びます!
鈴:またお呼びします。
ユ:お願いします。(笑)
柴:お大事に! (ユウコ退席)
鈴:なんの話だっけ。
柴:鉄コン。
鈴:あ。で、イってしまって。で、それを作ったのが※9マイケル・アリアスっていう外国人監督だったことに衝撃を受けたんですよ。
柴:あぁ。
鈴:で、実際に働いてみるとなかなか大変な、映像業界というか芸能一般はそうだと思うけど、やっぱり大変な部分っていうのがあって……、一度辞めてライターをちょっとやって、また戻ってる状況ではあるんですけどね。
柴:ぼくもね、さっき不順な動機で始めたってのはあるんだけど、紀里谷さんの影響はデカくて。
鈴:うん。
柴:中学校1年とか2年だったな、※10宇多田ヒカルのPVが出てきて、※11「Final Distance」とか※12「Traveling」とか。
鈴:はいはい。
柴:「こういう世界があるんだ」って思って。当時DVDはかなり最先端で、まだ四角いケースで売っていた時代なんですけど、PVまで買ってた。その中にメイキング映像があるんだけど、そこにヘアメイクさんも出て。
鈴:へぇー。
柴:そのヘアメイクさんのインタビューで、宇多田ヒカル以外のキャラクターというか、生き物のようで生き物じゃない、あの紀里谷さんの映像によくいる、そういうのいるじゃん。例えば顔がないとか。動いてる花とか。
鈴:うん。
柴:その人が当時50歳くらいだったと思うんだけど、「私が今まで出会ってきた世界なんですよ、この世界の住人は。」って言ってて。「紀里谷さんがそれを描いてくれたので、私はそれを助けたくて。」みたいなことを言ってた。「こういうことをしたいためにこの業界に入ったんです」って。その人は美容師出身なのね。名前は忘れちゃったんだけど。で、「あぁ、こういうことやりたいな」と思って。キラキラしてた。
鈴:うんうん。
柴:じゃあ、こういうことやるためにはどうしたらいいのか、まだわかんなかったんだよね。それで、少しでもそこに近い業界に近づこうと思って。で、一番ルート的に近いのは美容師かなって思った。実際は全然違ったけども。
鈴:実際にやってみるとね。でも働くってのはそいうことじゃない?ただ、やっていれば近づくのかな、って気はしますけどね。
柴:だから今は、自分がやりたいことに近いことをやれてるのかな、っていうのはあります。仕方なく納得してるんじゃなく、わりと好きなことやれてるかな。紀里谷さんからしたら俺なんて認識すらされてないだろうけど。
鈴:紀里谷さん、呼んだら来る気がしてきた(笑)
柴:最終的にはそこだね。
鈴:何回続くかわからないけれど。
柴:でも大丈夫かね。逆に好きすぎて物申しちゃうかも。
鈴:逆に!そういう話だと思う。「ちょっと来て聞いてください」と。
柴:なんの「逆に」かはよくわかんないけど(笑)とにかく、色々な人の話を聞ければと思ってます。
鈴:「これは聞こう」っていうのは決めようと。形式上だけどね。
柴:ギャラも出せないし、ほんとタダだから。なんかね、Tシャツとかを差し上げるっていう。絶対「いらねーよ」って言われるけど(笑)
■ 右翼、資本主義、理想の為に死ね
鈴:あと。修平は右翼なんですか?
柴:そういうわけではなく(笑)なんで?店のインテリアとか?
鈴:それもある(笑)
柴:話が一回脱線するかもしれないけど、かっこいいってね、アメリカなんですよ。アメリカ。
鈴:うん。なんだろう、大味だけどわかる(笑)
柴:かっこいいってなんなのかってときに、なぜそう思うのか、なぜアメリカがかっこいいのかっていうところを紐解いていくと、個人的には繋がるんですよ。歴史とか、今問題になっている色々なことを含めて。店に旭日旗とかが置いてあったりするのは、懐古主義というよりは温故知新と思っていただければ。
鈴:近代的な価値観としては「男は逞しく、女は美しく」っていうのはあったわけじゃないですか。日本だけじゃなくて。元服だって15歳とかだったわけでしょ。
柴:確かに。
鈴:いまは30歳で成人説があるくらいだもんね。だから、そういう規範があった時代がうらやましいなと思うこともあるわけですよね。ある種「男は逞しく、女は美しく」生きられないところもあるわけで。それに資本主義って同じ価値観でいてもらっては困るというかさ、どんどん流していこうよというロジックで回っているわけじゃないですか。それはそれで良いのだれけど、その中でかっこよさを見つけていくっていうことは、どういうことなんだろうな、と。家にネットが引いてあって、近くにコンビニがあれば生きていくには困らないわけで。凡庸な話なんですけどね、誰でも思うことだし。どうでもいいといえばどうでもいいんだけど、29歳という年齢で、まだ定まっていないっていうのは、ちょっと考える。
柴:模索中ですね。どうでもいいといえば確かにどうでもいい。
鈴:理想のために死ぬっていう美徳があったわけですよ、昔は。でも今の………、なんて言えばいいのか………、虚弱体質?が悪いとは思わないですね。
柴:僕もそれは同感で、すごく寂しいとか、空虚な時代とか言われている中で、ネットに対しての論評とかあったりするけど、僕は別にそうじゃなくて。例えば孝輔、今日遅れて来たじゃん?
鈴:はい(笑)
柴:メールすれば「ちょっと遅れるわ」で済むじゃん。でもこれ、30年くらい前はできなかったわけで。昔は待ち合わせに遅れないってことは、なにかを犠牲にして来るわけですよ。変な寝癖ついてるけど、まぁいっか、って感じで。
鈴:うんうん。
柴:いまってフル装備の状態で来ることができる。メールやLINEで連絡しちゃえば。だから、すごくいい時代だと思う。人間すごく幸せに向かってると思う。これは間違いなくそう思う。
鈴:いい感じに対談っぽいぞ(笑)
柴:ただ、うーん、て感じるのは、なんでなのか。ただ欲張りなだけなのか。ずっとこれを思い続けるのかはわからないんだけど。救いを求めてるわけじゃないけど、なんかそういう色々な人の話を聞いて、「あ、そうか」とか「別にそんなこと考えなくていいのか」とか、そういうヒントをもらえたらなと。ちょっと他力本願なところもありますが。
鈴:不幸にならない方法は教えてくれると思うんだよね。例えば初等教育の段階でお金の話をしましょうとか。そういう話もあるじゃないですか。あれって要は、不幸にならないためのセーフティーネットみたいなもんでしょ。ただ、不幸を排していったら幸せになれるってことはないとは思うんすよね。生きていけばそんなこと誰でも気付くんですけど、意外とそういうのって「個人の自由」で済んじゃうところはあるじゃないですか。退けられてしまうというか。
柴:退けられちゃうね。
鈴:宗教も含め、個人個人でやってください、っていう。
柴:そうそうそう。不幸は退けられるんだけど、ってとこはほんとにそう思って。ネットニュースを見るのが習慣になってるんだけど、ほんとにアホな記事とかもあって。ほんとうになにが言いたいのかわかんないで終わっちゃうものとかもあるんだよね。で、批判している人に共通してるのは、リスクの方ばかりに目を向けているっていうか……。
鈴:そうね。
柴:これは語弊があるかもしれないけど、例えばSNSのせいで直接のコミュニケーションが失われるとか言われるけど、僕はほとんどやってないわけ。でもそのおかげで直のコミュニケーションがおおいに保てているとは思わない。それと同じでゲームばっかりやってると人殺すとかさ、おかしいよね? 人間、やっぱりリスクばかり語るんですよ。
鈴:流石にゲーマーな修平くんは怒りますよね。(笑)あ、修平くんは休みの日はゲームばっかりしてます。
柴:ほぼ毎週です。
鈴:(笑)
柴:究極なんだけど。例えば火事ってめっちゃあるんですよ。年間5万件とか。でも火を使って人間変わったじゃん。人間の生活って。で、ネットじゃない人と人とのコミュニケーションを大切にしましょうってのもわかるけど、あんまりそっちにいっちゃうと火使わなくなるのと一緒じゃないですか。だから、リスクばかりを見ない方がいいと思うかな。そうした方がもっとよくなる部分もあるんじゃないかなっていう。とくにマスコミに対しては。
■ 『デビルマン』、ボウズ、『1984』、王道
鈴:最近気になったものとかありますか。
柴:※13『デビルマン』。原作を読んで。
鈴:必読書ですね。
柴:僕が好きなものは、全部あれから来てると思った。
鈴:小学生のときにあれを読んだらその後を方向付けられちゃうよね。ヒロインの生首が晒されてるんだからさ。
柴:昔の漫画だから、最初の展開が「そんなアホな」っていうのもあるんだけど、読んでいくうちに「こりゃすげぇ」って。
鈴:結局原点に当たるってことですよね。パロディのパロディのパロディのパロディ……だけだとさすがに。変に教養主義的になってもしょうがないですけど。抑えておくのはやっぱ大事だと思います。
柴:王道は王道で難しいけどね。例えば王道のヘアスタイルってなにっていう。
鈴:好きと良いを混同しちゃう危険性はあると思ってて。分けて考えるのは大事かなって。ただ、「あなたはなにがかっこいいって思ってます?」っていうのは聞いていきたいけどね。
柴:そうだね。あと、読んでくれる人のことはやっぱり考えちゃいます。9割自分たちのためでいいんだけど、その人たちの、日々のライフスタイルが少しでもかっこよくなればいいと。いつも四角だったけど、この対談を読んで丸めがねになった、みたいな(笑)ちょっとでもプラスになれば。あと、若い人たちや明日どうしようみたいな人たちの日常に少しでも刺激が生まれれば本望。
鈴:うん。
柴:個人的には仕事の話とも直結してて。この間店でミーティングしたんだけどさ、嫌な客っているんですよ。嫌な客は嫌じゃないですか。さっき「好き」と「良い」は違うって話があったけど、例えば新人が入って来たとするでしょ。「なんで入ってきたの?」って聞いたら、「美容が好き」って。もちろん大事なことなんだけど「好き」だけじゃ限界がある。それだと嫌な人がきたら「嫌だな」って、なっちゃうじゃん。
鈴:そうだね。
柴:美容って、カラー、パーマを通じてお客さんの顔つきが変わって。それをきっかけに、その人がかっこいい人、かわいい人と出会う。ちょっとハッピーになる。そういうお手伝いをする仕事だと思います。美容師は。だから、僕らは「好き」っていう感じだけだと潰れやすいと思う。その先の「使命感のようなもの」だと思う。ってことはみんなに伝えました。自分にも言い聞かせるつもりで。だから「好き」だけだと弱いかなと。
鈴:「美容」だからね。髪が長いから切る、だけだったら家で切ればいい。機能性重視で全員ボウズでいいわけです(笑)
柴:ほんとそうだ(笑)
鈴:※14『1984』みたいな世界になっちゃいますね。
柴:少しでもそこから離れるためにここがある…、かな。
1村上龍と坂本龍一の対談集
『EV.Café超進化論』(講談社)1985年単行本出版。

2ナナコン
月の第一日曜に阿佐ヶ谷3349にて開催される飲み会。

3伊藤さん
阿佐ヶ谷3349スタッフ

4紀里谷和明(Kazuaki Kiriya)
1968年生まれ、映画監督、写真家。代表作は映画『CASSHERN』『GOEMON』元妻宇多田ヒカルのMV『FINAL DISTANCE』『traveling』など多数。

5『CASSHERN』
紀里谷和明監督作品2004年公開。1973年放送のタツノコプロによるテレビアニメ『新造人間キャシャーン』を原作とする実写アニメ。

6SUTUDIO4℃
日本のアニメ制作会社。1986年、プロデューサー田中栄子、アニメーター森本晃司が中心となって設立。

7『鉄コン筋クリート』
松本大洋原作の漫画を元に作られたアニメ映画。2006年公開。

8ユウコさん
阿佐ヶ谷3349店長

9宇多田ヒカル(Hikaru Utada)
1983年生まれ、シンガーソングライター。1998年「Automatic/time will tell」でデビュー。

10マイケル・アリアス(Micheal Arias)
1968年生まれ、コーエン兄弟、スパイク・リー、デヴィッド・クローネンバーグ監督などの下でコンピューターグラフィックス制作に携わる。2002年『アニマトリックス』制作。2006年『鉄コン筋クリート』監督。

11「Final Distance」
2001年7月リリースの宇多田ヒカル8thのシングル。MVは元夫紀里谷和明。

12「Traveling」
2001年11月リリースの宇多田ヒカル9thシングル。MVは元夫紀里谷和明。

13『デビルマン』
永井豪により1972年から1973年に「週刊少年マガジン」で連載された漫画作品。

14『1984』
イギリスの作家、ジョージ・オーウェルによって書かれたSF小説。1949年刊行。
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